貧乏トラベラーの節約旅行術

LCCや格安航空券など安く旅する方法や情報をつらつらと

バリューアライアンスのメリット、成り立ち、現状と今後の可能性

日本のバニラエアなど8社が参加し、2016年5月に設立されたバリューアライアンス。

設立時には世界で初の国を超えたLCC連合として話題になりましたが、最近では耳にすることもほとんどなくなりました。

バリューアライアンスはどういう狙いで設立され、どんなメリットが期待され、現在はどういう状況になっているのか?今後の予想も含めて貧乏トラベラーの視点でまとめました!

バリューアライアンスの概略

全日空が入っているスターアライアンスや、日本航空が入っているワンワールドはご存知ですよね?

バリューアライアンスもこれらと同じで、複数の航空会社が参加している航空連合です。そして、参加しているのがすべて格安航空会社(LCC)である点が特徴です。

f:id:RJFF:20170503195552p:plain

LCCだけの航空連合としては、2016年1月に結成された、香港エクスプレスなど4社が参加するU-FLYが第一号ですが、4社とも海南航空傘下の中華系航空会社でした。

バリューアライアンスはU-FLYに4ヶ月遅れの2016年5月に結成されましたが、加盟航空会社が6ヶ国に及ぶ、世界初の国際的LCC連合です。

加盟している航空会社は以下の8社です。

  • バニラエア(日本)
  • チェジュ航空(韓国)
  • ノックエア(タイ)
  • ノックスクート(タイ)
  • スクート(シンガポール
  • タイガーエア(シンガポール
  • タイガーエアオーストラリア(オーストラリア)
  • セブパシフィック(フィリピン)

バリューアライアンス設立の狙い

東南アジアのLCC市場の現状

バリューアライアンスはなぜ設立されたのか?それを知るるには、まず東南アジアのLCC市場がおかれた現状を理解する必要があります。

LCCは日本では2012年前後にスタートしたばかりで、市場シェアもまだ小さいです。

しかし、東南アジア諸国の多くではすでに半分以上のシェアを持っており、航空市場の主役はLCCです。

そしてそこでは、国内のみならず国境を超えた激しい競争が繰り広げられています。

東南アジアの主要LCCグループ

東南アジアには多くのLCCがありますが、主なものは次のようなグループに分けられます。

エアアジアグループ

本部はマレーシアで、タイ、インドネシア、フィリピン、インド、日本に現地法人があり、ベトナムにも設立予定です。マレーシア最大の航空会社で国際線も多数あります。

ノックグループ

タイ国際航空系列で、国内線中心のノックエアと、国際線中心のノックスクートの2社があります。ノックスクートは次に紹介するシンガポールのスクートとの合弁会社です。

スクートグループ

シンガポール航空系列で、近距離中心のタイガーエアと遠距離中心のスクート、オーストラリア法人の3社からなります。台湾法人は2016年12月に譲渡されました。

セブパシフィックグループ

フィリピン最大の航空会社であるセブパシフィックと、子会社のセブゴーの2社があります。セブゴーはかつてはスクートグループのフィリピン法人でした。

ジェットスターグループ

オーストラリアのカンタス航空傘下で、日本、ベトナムシンガポール現地法人があります。

東南アジアの主要LCCの競合状況

さて、バリューアライアンス設立の鍵は、これら東南アジアの主要LCCの力関係にあります。

どのグループが強いのか、所有する機材の数で比べてみます。東南アジア法人の機材数で比べますので、日本やインド、オーストラリアなどの法人が所有する機材は含めていません。

航空グループ
機材数
エアアジア
206
セブパシフィック
58
スクート
35
ノック
33
ジェットスター
32

見ての通りです。エアアジアが圧倒的に強いのです。ジェットスターも大手ですが、オーストラリア法人の機材を足しても、エアアジアの半分にも及びません。

エアアジアの脅威

エアアジアは東南アジアの他の航空会社にとって大きな脅威です。

例えば、ノックエアはタイの国内線がメインですが、エアアジアのタイ法人であるタイ・エアアジアにすでに売上高で2倍の差を付けられています。

スクートとタイガーエアはすべてシンガポール発着の国際線ですが、多くの路線でエアアジアと競合しています。

例外は国内線で圧倒的なシェアを持ち、中東やオーストラリアなどエアアジアと競合しない路線を多く持つセブパシフィックくらいで、他の東南アジアLCCの多くはエアアジアの脅威にさらされているのです。

バリューアライアンスの構図

この視点で眺めてみると、バリューアライアンスの構図が見えてきます。

まず、ともに親会社がスターアライアンス加盟のタイ国際航空シンガポール航空であり、エアアジアの脅威にさらされており、ノックスクートの設立など提携関係にあるノックグループとスクートグループが、対エアアジアで連合を組んだ。

そこに、同じくスターアライアンス加盟の全日空傘下で、東南アジア市場に参入したい思惑があるバニラエアが加わった。

f:id:RJFF:20170503195713p:plain

チェジュ航空ですが、シンガポール航空は2014年前後にノックスクート設立や、ヴァージンオーストラリアとの提携などLCC対策を進めていました。

その一環として(最終的に破談にはなったのですが)2015年春にチェジュ航空との間で資本提携交渉をした過去があります。恐らくそのつながりでチェジュ航空を誘ったのではないか?

そしてセブパシフィックは2014年にタイガーエアとの間で、互いの航空券を自社予約サイトで販売するインターライン提携を結び、旧タイガーエア・フィリピンを子会社化するなど、提携関係にありました。

その関係がベースにあり、エアアジアへの牽制の狙いもあって参加したのでしょう。

エアアジアの弱者連合

シンガポール航空系のスクートグループと、タイ国際航空系のノックグループが、共通の脅威であるエアアジア対策で連合を組んだ。

そこに、スターアライアンスつながりでバニラが加わり、シンガポール航空つながりでチェジュが加わり、タイガーエアつながりでセブパシが加わった。

要は、エアアジアにまるで歯が立たず脅威に怯える2グループ5社に、それぞれの思惑でバニラなど3社が加わった、弱者連合をベースとするアライアンス。これがバリューアライアンスの本質だと思うのです。

バリューアライアンスは上手くいくのか?

では、バリューアライアンスは上手くいくのか?僕は無理だと思います。

加盟航空会社の思惑の違い

まず、加盟する8社の思惑が異なるからです。

スクート系とノック系の5社の狙いは、上述の通りエアアジア対策です。つまり、自分の島を守りたい、です。

これに対して、セブパシフィックはすでにタイガーエアと提携を結んでいます。スクートとタイガーは2017年中にも合併する予定ですし、スクート系とノック系は提携関係にある。セブパシとしてはこれに乗じてさらに販路を広げようと考えるでしょう。

そしてバニラとチェジュの狙いは、東南アジアへの進出です。それも、1億人の日本人、5千万人の韓国人を東南アジアに送り出すアウトバウンドではなく、6億人の東南アジア人を日本、韓国に呼び込むインバウンドと見て間違いありません。

バニラとチェジュは東南アジアの旅行客を自国に呼び込みたい。言うまでもなく、自社の航空機で。

セブパシは微妙として、バニラとチェジュの狙いは、自分の島を守りたいスクート、ノックの狙いと真っ向からぶつかります。こんなアライアンスが上手くいくのでしょうか?

弱者連合に勝ち目はない

そしてもう一つ。論理的根拠がないイメージのみの理由ですが。

エアアジアに対抗しようとするスクートとノックは、ともに実質国営企業シンガポール航空タイ国際航空の傘下企業です。親方日の丸の国営企業の子会社です。

対するエアアジアの創業者トニー・フェルナンデスは、インド系の両親を持ち、外資系企業の役員の地位を捨てて、経営破綻寸前の航空会社を私財を投じて買収し、一代でアジア最大のLCCに育て上げた叩き上げの経営者です。

親方日の丸傘下の弱者連合に勝ち目はありません。

バリューアライアンスのメリット

さて、ここからが本題です。(まだ続くんかい!笑)

ダメダメムードがただようバリューアライアンス。僕たち貧乏トラベラーにはメリットナッシングなのでしょうか?いえ、決してそうではありません。むしろメリットがあります。

アライアンスとしての特典一覧

スターアライアンスなど一般的なアライアンスの特典が、バリューアライアンスに付いているか見てみます。

マイレージの提携
なし
上級会員の優先搭乗等
なし
空港ラウンジ
なし
ターミナルの共通化
なし
コードシェア
なし
スルーチェックイン
なし
スルーバゲッジ
なし
加盟他社便の一括予約
遅延時の乗り継ぎ保証

特典の説明

今ひとつよく分からんという人のために一つ一つ説明していきます。

マイレージの提携

例えばスターアライアンスだと、シンガポール航空に乗ったときのマイルを全日空のマイルにするといったことができますよね。

バリューアライアンスの場合、スクートに乗ったときのマイルをバニラのマイルにするといったことはできません。ってか、マイレージ制度がない航空会社が多いです。

上級会員の優先搭乗等

例えば、スターアライアンスのゴールド会員だったら優先搭乗や優先保安検査が受けられるとか、そういったサービスはありません。

空港ラウンジ

全日空の上級会員だったら、チャンギ国際空港で同じスターアライアンスシンガポール航空のラウンジを使えるといったサービスもありません。

そもそもLCCでラウンジを使えるのは、ジェットスターの上級チケットなどごく一部です。

ターミナルの共通化

例えば成田空港では、スターアライアンス加盟各社のチェックインカウンターは第1ターミナル南ウイングにまとめてあり、乗り換えの利便性を高めています。こういった対応も現時点ではありません。

コードシェア

スクート運航便をバニラエアの便として利用するといったことも、現時点では話に出てきていません。

スルーチェックイン

例えばバニラとスクートで、成田→台北→シンガポールゴールドコーストと3つの飛行機を乗り継ぐ場合、成田でまとめてチェックインすることはできません。乗り換えの都度、チェックインする必要があります。

スルーバゲッジ

上の例で、成田で荷物を預ければ、あとはゴールドコーストで受取るだけ、とはなりません。乗り換えのたびに荷物を受け取って、カウンターで預けなければなりません。

加盟他社便の一括予約

同じく上の例で、バニラエアのサイトで3つの便を同時に予約することができます。ただし、システムの提携ができた航空会社同士の場合に限ります。これについては後述します。

延着時の乗り継ぎ保証

同じく上の例で、成田からの便の台北への到着が遅れ、台北からシンガポールへの便に間に合わなかった場合、その次の空席がある便への振り替えを行います。

「え、するの?!」 あなたの驚きの声、遠く離れた僕の耳にしっかり届きました。そうです。なんとするんです!!!

バリューアライアンスは乗り継ぎ保証をする!

僕もビックリしました。ひっくり返るほど驚きました。あまりの驚愕に二回読み直しました。するんですよ。マジで!

乗り継ぎ保証はしないのが普通

LCCでは乗り継ぎ保証はしないのが普通というか常識です。

例えば、セブパシフィックで大阪→マニラ→セブと乗り継ぐチケットを買い、マニラへの到着が遅れてセブ行きの便に間に合わなかったとします。このとき、セブパシは何も保証しません。セブ行きのチケットが紙くずになるだけです。

でもこれって正しいんです。運送約款を読んだことがある方はご存知でしょう。乗り継ぎの保証はしない、間に合わなくても責任は取らないとちゃんと書いてます。

乗り継ぎ保証は航空会社のサービス

実はこれ、日本航空全日空も同じです。予約した2点間の輸送についてのみ責任を負い、到着時刻については責任を負わないと書いています。

日本航空などが自社や他社便に振り替えたり、翌日便になる場合にホテルを手配してくれるのは、単なる好意でありサービスです。

普通の航空会社に比べて利幅が薄いLCCが、運送約款で契約していないサービスを好意で提供しないのは当たり前のことなんです。

っていうか、そういうところでコストを下げてチケットを安くするのがLCCのビジネスモデルです。なのにマジでやるんですよ、乗り継ぎ保証!

バリューアライアンスの乗り継ぎ保証内容

もちろん、普通の航空会社並みの乗り継ぎ保証をしてくれるわけではありません。

例えば、次のような予約をしたとします。

  1. 成田→台北:バニラエア
  2. 台北→シンガポール:スクート

バニラが遅れてスクートに間に合わなかった場合、次便以降の空席があるスクート便に振り替えられます。

シンガポール航空チャイナエアラインは言うまでもなく、同じLCCジェットスターに振り替えることもしてくれません。また、翌日便になってもホテルの手配などはしてくれません。

これはトンデモなく画期的!

でも、遅れた場合に後続便に乗せてくれるんです。これってみなさん、天文学的に画期的です。

LCCの常識では、バニラが遅れたら台北からのスクートのチケットはゴミになり、シンガポール行きのチケットを買い直すしかありません。ってか、それがLCCです。

ピーチで成田→関空→上海と買って、関空到着が遅れて上海行きに間に合わなかった場合、同じピーチなのに上海行きの後続便に乗せてはくれません。

LCCでは乗り継ぎ保証はしないのが当たり前。それをバリューアライアンスはしてくれるというのです。しかも無料で。

貧乏トラベラーにとって、盆と正月とヤマザキ春のパンまつりが一緒に来たようなビッグニュースです!

一括予約した場合が対象

ただし条件があります。オンラインで一括で予約した場合に限ります。

例えば、上記のバニラエアとスクートで成田→台北→シンガポールと飛ぶ場合。バニラのサイトで一度にまとめて予約する必要があります。

バニラのサイトで成田→台北を予約して、スクートのサイトで台北→シンガポールを予約した場合はダメです。

でもそのためには、バニラエアのサイトでスクートやセブパシフィックなど、バリューアライアンスに加盟する他の航空会社のチケットが予約できなければなりません。

つまり、加盟8社の予約システムが提携されている必要があります。さて問題です。提携されているでしょうか?

バリューアライアンスの現状

加盟以前からのインターライン提携

現在、バリューアライアンス加盟8社の内、タイガーエアとセブパシフィック、スクートとノックエアなど、一部の航空会社間では双方のチケットを予約できるようになっています。

しかし、これらはすべてバリューアライアンスが結成される前から行われているインターライン提携であり、乗り継ぎの保証は行われていません。

バニラエアとスクートで提携開始

そんな中、2016年11月からバニラエアとスクートとの間でシステム提携が開始されました。

バニラとスクートの組み合わせの成田→台北→シンガポールという予約を、バニラのウェブサイトでできるようになったのです。

そして、もちろんこれは乗り継ぎ保証の対象です。我々貧乏トラベラーにとって嬉しいニュースでありました。

実は一方向の提携

このことは航空系のメディアでもそこそこ大きく報じられました。

ところが僕が知る限り、どのメディアも報じていないことがあります。実はこの提携、一方通行なのです。

バニラのサイトで次の予約はできます。

  1. 奄美大島→成田:バニラエア
  2. 成田→シンガポール:スクート

ところが、スクートのサイトで次の予約はできません。

  1. シンガポール→成田:スクート
  2. 成田→奄美大島:バニラエア

バニラのサイトでスクート便の予約はできるけど、スクートのサイトでバニラ便の予約はできない。

実は今回のバニラエアとスクートのシステム提携、バニラからの片方向だけなんです。

バリューアライアンスの今後

2016年5月に結成し、1年かけてできたのはバニラとスクートのシステム提携だけ。しかも片方向のみ。

今まで述べてきたように、そもそもが対エアアジアの弱者連合であり、島を守りたい航空会社と、新たな島を取りに行きたい航空会社との、同床異夢のアライアンスです。

成り立ちに無理があった面は否めませんが、それにしても8社が集まって1年かけて、できたのが2社間の片方向だけというのは、さすがにいかがなものでしょうか。

僕はLCC大好きの貧乏トラベラーですので、バリューアライアンスにはもちろん頑張って欲しいのですが、あまり期待できそうにないなというのが正直な気持ちです。